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大企業ができないモノ作り

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雪国科学の物語 その5

なぜ手始めに床暖房の開発を着手したのか

床暖房 最初から融雪システムを作ろうとしたのですが、新潟市内は雪が少なく実証実験ができる期間が短いために床暖房を先に開発することにしました。それには、融雪と同じ技術を使う可能性があるからという、もう一つの理由がありました。
 きっかけは、やはり自宅のログハウス建設にあります。その際に床暖を設置しようと製品のことを調べた町屋は唖然としました。保証期間の短さに驚いたのです。
 「床暖房の保証期間が、いずれも1年や2年保証ばかり。日本中を調べても、大手メーカーでさえ、せいぜい2年保証しかなかった」
 加えて、日本の住宅はせいぜい20年しか使えないような家造りが常識となっていました。このようなモノ作りは大間違いではないのかと町屋は感じたと言います。
 そのような考えは、父親から影響を受けそうです。「モノ作りをするなら壊れないようなものをつくれ。永く使えるようなものでなければ意味がない」と言い続けた人でした。
 外国製の電気シェーバーや包丁には、長い間切れ味がおちない優れた製品があります。切れ味が落ちた時にメンテナンスをしてあげると、そこからさらに永く使えるようになるのです。
 その圧倒的な性能を知る町屋は「床暖房を作るのなら最初から10年保証できる製品を作ろう」と決心。2年保証が常識の時代に10年保証を目指しました。
 床暖房の開発を通じて分かったことがあります。それは「断熱材が熱を止めない」という驚きの事実。
 断熱材と言われているモノは正しくは「熱の減速材」で、熱が伝わる速度を遅くする材料しかありません。そのような材料だけに頼っているシステムとは、そもそも間違っているわけです。
 このようなことを自ら研究し、本当の省エネ商品を作ろうとしたのです。

永く使えるとはどういうことか

 「ただ単に、丈夫であるだけではダメなんだ」と町屋は言います。永く使っても性能が一流であり続ける、使っていても飽きない良いモノでなければいけないとも…。
 安全であること自体も永続きしなければいけません。これらの条件をクリアしないと丈夫で永持ちしても意味がないのです。技術的に劣化して陳腐化していたのでは永持ちしても魅力がありません。
 「秀でた性能を持っていてこそ、永く使える」
 そうような考えのもとで開発し、10年保証を実現したのが雪国科学の床暖房なのです。

大企業ではできないモノ作り

床暖房2 企業は、組織が大きくなる過程では外に向かって力を発揮するものです。ところが企業が大きくなって倒産しそうもなくなると内に向かって力が働くようになってしまします。
 「出世や昇進、生き残りとかに力が注がれてしまう。そうすると人のもつパワーがマイナスに働くんだ」と町屋はサラリーマン時代に感じていました。
 もちろん人数のかけ算で総じてパワーは出すのだけれど、技術開発においては一人の人が追い続けないと到達できない領域があるのも事実です。上司から「こだわるな、そんな採算の合わない研究をいつまでもやっているな」と言われる可能性もあるでしょう。
 断熱材を使った技術もそんな盲点にはまりやすいものでした。様々な種類の断熱材があるために情報が過剰となり、大手メーカーでは逆に見落とすものが出てくることもあるのです。
 サラリーマン時代の町屋は、新潟の販売会社に在籍しながら本社の開発にも関わっていました。その時に、開発の流れを見ていて「切り落とされる技術」があることを知ったと語ります。
 全体の効率や採算のために削られてしまうのですが、その中に本当に意味のある消費や価値のある商品になる可能性を秘めていたことがあったといいます。社員を大勢抱えている大企業は売上を上げていかなくてはいけないので妥協した商品を出さざるを得ない場合があるというのです。融雪システムも床暖房にしても、一人の人間が極めていかないと到達しない技術だと考えます。「妥協しないで突き詰めていけば、大手メーカー以上のより良い商品が出せるのではないか」と日々研究開発を進めています。
 「追求し継続し続ける個人の強さ」
それが業界の常識を覆した10年保証を実現した雪国科学の技術開発の原動力なのです。